高剛性化や軽量化を叶える手法のひとつに、トポロジー最適化があります。トポロジー最適化は、高い強度を保ったまま軽量化できる構造をシミュレーションでき、自由な造形を可能にする3Dプリンタの普及に伴いますます需要が高まっています。長年にわたり設計段階でトポロジー最適化を実施している中央エンジニアリングは、トポロジー最適化の2つの大きな問題を認識していました。
課題
1つ目は、制約条件がユーザーによって曖昧に決定されるため、条件を変更しながら何度も解析を繰り返し、所望する性能を導き出すまでに膨大な手間と時間がかかることです。解析をする際にあらかじめ条件として体積率や最小部材間隔を入力しますが、その解析結果はあくまでその条件下での最適な結果となります。より優れた結果を目指して制約条件を何度も変更しながら解析を繰り返すことになりますが、何が本当に最適形状なのか判断するのは難しくなります。
2つ目は、解析結果に中間的な密度を持つファジーな領域(中間密度要素)が含まれる点です。密度法を用いたトポロジー最適化では結果が材料密度分布で表され、必要な部分は1.0、不要な部分は0.0となり、そしてそれらの間の値を持つ中間密度要素で構成されますが、これがあまりにも多いと最終形状にした際に重量過多になってしまうことがあるため、なるべく生成しないことが好まれます。そのため中間密度要素が可能な限り発生しないような結果がでるまで制約条件を変更しながら解析を繰り返すことがあります。
ソリューション
このようなトポロジー最適化に関わる課題解決のため、中央エンジニアリングがとったアプローチの一つが機械学習の活用です。
制約条件の決定については、制約条件と解析結果の因果関係を明らかにするために機械学習を使った回帰分析を用い、最適な制約条件をスピーディーに見つけるという手法を取りました。最適化ソフトウェアAltair HyperStudyを用いて制約条件内でいくつかの適当な値でトポロジー最適化解析を実行し、機械学習で使用するサンプリングデータを集めます。そしてそのサンプリング結果をもとにベイズ最適化を用いた回帰分析を行います。これによって作成された回帰モデルを使って、最も適した制約条件を推定して、その条件でAltair OptiStructで解析します。これを繰り返すことで不必要な解析を省いて最適な結果を探していくことができます。さらに、中央エンジニアリングはPythonを用いた「AI自動実行ツール」を自社で構築して、この一連の流れを自動化しました。
2つ目の中間密度要素の扱いについては、これらのプロセスで得た同程度の最適な結果の中から中間密度要素が少ない解を分析するために、機械学習ツールであるAltair Knowledge Studioを使用し、クラスター分析によって中間密度要素が少ない最適な制約条件を導きました。
結果
中央エンジニアリングが導入したこれらの方式によって、既存の金属部品のトポロジー最適化解析の実行回数は約93%減少しました。また、トポロジー最適化解析の目的であった軽量化についても重量を約54%削減することができました。中央エンジニアリングはこの機械学習を用いたプロセスの導入によってトポロジー最適化の課題を解決し、利用価値を高めることができたと考えています。
機械学習を適用したトポロジー最適化は、軽量化の解析だけでなく軽量化と高剛性化といった多目的への対応に向けて現在中央エンジニアリングでは開発を進めています。現在開発中の『AI自動実行ツール』のGUI化にも取り組み、より使い勝手の良いものにし、今後は機械学習を解析に適用するアプローチを、トポロジー最適化以外の解析、例えば構造や熱流体、電磁波などにも広げていくとしています。
詳細については、https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2201/31/news012.htmlをご覧ください。